政治要因に左右されない日本市場

先週後半、テレビでは久しぶりに、政治のニュースがオリンピックのニュースよりも先に報じられる日があった。
自民党は、与党批判と倒閣という野党の大義と、消費税率引き上げに関する民・自・公の3党合意とのいずれを優先するかの踏み絵を踏んだ。野田・谷垣両氏の党首会談を経て、結局、解散確約の無いまま、自・公両党は参院での法案採決に協力した。

もっとも、谷垣氏がいかにお人よしでも、遠くない時期の解散の約束なしに採決への協力だけ先出しで合意したわけではあるまい。体面上、首相が決断した形で解散するが、時期に関しては、一定の期限を含めて、野田・谷垣両氏で約束した、と見るのが常識的だ。
ただし、有権者との選挙公約を平気でほごにする野田首相だから、谷垣氏が騙される可能性はゼロではない。
政治は「一寸先が闇」の世界なので、確たる予想は立たないが、総選挙は近いと見るべきだろう。これを先送りしようとした場合にも、何らかの政局が発生する公算が大きかろう。つまり、日本の政治は当面一層不安定化する公算が大きい。この事情は、株式や外国為替の「市場」にどう影響するだろうか。

常識的なセオリーは、政治の混乱、特に政府の弱体化は、その国の株価と為替レートの弱化材料だ。日本のマーケットも、十数年前ぐらいまでは原則にある程度沿っていた。
しかし、現在は、国内政治の市場への影響は、通常とはかなり異なる。理由は3つある。
まず、日本の経済や企業業績は海外要因により大きく左右される。
仮に、野田内閣が総辞職する事態になっても、米国の雇用統計で予想よりも大幅にポジティブな数字が出たら、日本の株価はプラスに反応するだろう。今や、市場の「材料」として、日本の政治はその程度の存在感に過ぎないのだ。
次に、日本の株価全体の方向性に大きな影響を与えている投資主体が、非居住者の機関投資家であることだ。日本株は世界の株式への分散投資の一パーツに過ぎない。
加えて、内外の市場参加者が、日本は、政治家が国を動かしているのではないと認識している。今回の消費税率引き上げ法案が好例だが、税率を引き上げないという選挙公約が与党にあろうと、国民の多数が反対していようと、官僚とその周辺が政策をハンドリングしている。「政局」といっても、芝居や映画でいうと配役の交代程度のもので、脚本や監督の変更ではない。

大阪維新の会などのいわゆる第三極の選挙準備が整っていない現状で、民・自両党いずれかが政権を獲る程度の「政局」を市場はほとんど気にするまい。国の行動が何も変わらないのだから、当然の反応といえる。