為替ヘッジありの投信が人気

外国為替市場で円高が進む中で、「為替ヘッジあり」のファンドが注目を集めている。「為替ヘッジあり」のファンドの本数は11年末には240本超、純資産総額は計1兆1,500億円超にまで拡大している。過去の純資産総額の推移をみても、リーマンショックのあった08年を除いて設定本数、純資産額はともに増加傾向となっている。12年7月末までの過去1年間の「為替ヘッジあり」のファンドへの純資金流入額は約8900億円に達している。こうした「為替ヘッジあり」のファンドの本数、純資産額の増加の背景には、通貨選択型ファンドの増加が影響している。

なおモーニングスターでは、通貨選択型ファンドは独自のカテゴリーを付与しておらず、通貨選択型ファンドの日本円で為替ヘッジするファンドは「為替ヘッジあり」の各カテゴリーに分類される。このため、通貨選択型ファンドのシリーズ中では円で為替ヘッジするファンドを設定しているケースが多いため、「為替ヘッジあり」のファンドの本数の増加につながったと推測される。

 

「為替ヘッジあり」のファンドでは、どのようなカテゴリーに属するファンドの純資産額が多いのだろうか。12年7月末時点での「為替ヘッジあり」のファンドをみると、カテゴリー別のシェア(純資産額ベース、12年7月末時点)では、「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」、「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジあり)」のシェアが高い。相対的にリスクの高い資産の純資産総額シェアが高いようだが、前述した通り、通貨選択型ファンドは比較的リスクの高い資産を原資産としたシリーズが多く設定されていることが影響していると推測される。

 

また、本数ベースでみた場合には、「国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」は38本、「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」は28本と、先進国債券、先進国株式へ投資するファンドの設定本数も増加している。特に「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」は、10年末の17本、09年末の12本と比較すると本数を大きく伸ばしている。「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」は、「為替ヘッジあり」のファンドへの注目が高まるにつれ、「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」のファンドの両者が設定されるケースが増えたことが影響していると推測される。いわゆる「テーマ型」のファンドも多いが、幅広い世界の株式に投資するファンドも散見される。ただ、「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」の純資産額自体は全体の3.7%にとどまり、先進国債券へ投資するファンドなどと比較するとあまり高くはない。

 

一方、12年7月末時点における過去5年間のトータルリターンのカテゴリー別平均(年率)をみてみると(モーニングスター・インデックスベース)、主要なカテゴリーでは「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジあり)」、「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジあり)」などが上位となっている。ただ、上記のように先進国の株式、債券に幅広く投資するファンドの設定本数が増加する中で、今後は「為替ヘッジあり」のファンドが資産運用、ポートフォリオのコア(中心)となる可能性についても考えておいたほうが良いのかもしれない。