鈍化する米国景気見通し

米企業の決算シーズンの終了が近づくにつれて、景気の方向性について心配な問題が浮かび上がってきた。

 

トムソン・ロイターの調査によると、S&P総合500種指数の構成銘柄のうち既に第2四半期の決算発表を終えた企業では、売上高が市場予想を上回った企業の比率が09年以来最低の水準に落ち込んだ。今後の業績が当初の予想より悪化するとの見通しを示した企業と改善するとの見通しを示した企業の比率(ネガティブ/ポジティブレシオ)は、およそ5対1となった。また第3・四半期の利益予想は大幅に下方修正されて前年同期比1.8%減と、3年ぶりにマイナスに転じるとの予想が示された。

第2四半期の純利益は前年同期比8.4%増と全体的に堅調だった。しかしバンク・オブ・アメリカによる前年同期の経費計上が全体をゆがめており、同社を除けばわずか3%の増益にとどまる。

 

投資家によると、第2四半期の決算内容は今後の業績に警報を発している。通常、景気拡大局面の初期においてはコスト削減が利益を押し上げる形で業績が堅調に推移し、その後の段階で需要が増えるのに伴って売上高が追随する傾向にある。今回は景気拡大期に入って3年近くになるが、そうしたパターンが見られないのだ。

クレディ・スイスのクウォンタティブ・リサーチ・アナリスト、パンカジ・パテル氏は「これは景気の減速を意味し、われわれがこれまで馴染んできた強気の業績見通しを示すものではない」と述べた。

これまでにS&P総合500種指数構成企業の95%が決算発表を済ませたが、売上高が市場予想を上回ったのは41%にすぎず、過去4四半期平均の64%を大きく下回る。

 

米企業は欧州の景気後退、中国の成長鈍化、米経済の力強さの欠如など、いくつかの面で打撃を受けている。最近のロイター調査では、4-6月期の国内総生産(GDP)成長率は年率換算1.5%と、1-3月期の1.9%から鈍化した公算が大きい。

こうした経済面での材料はどれも目新しいものではないが、利益は68%の企業が市場予想を上回ったにもかかわらず、売上高が予想に届かない企業がこれほどの比率に達したのは驚きだ。

つまり各社は投資の拡大ではなくコスト抑制や事業の整理統合で増益を達成したのであり、このことは米失業率の高止まりに表れている。

レイモンド・ジェームズのエクイティ・アドバイザリー・グループの共同責任者、マイケル・ギッブス氏は「売上高が利益ほど伸びていない。景気回復の初期にはこういうことが起きる。今は回復の機が十分熟しているのに、売上高は出遅れている」と話した。

 

第2四半期に売上高の予想への到達度が特に悪かった業種は素材、鉱業、公益などで、この3つの業種は70%が予想を下回った。

売上高が予想に届かなかった企業の1つが米航空機エンジン・機械大手ユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)で、同社は欧州経済低迷の影響で年間の利益の伸びが横ばいにとどまると警告した。素材関連では産金大手のニューモント・マイニングも売上高が予想を下回り、通年の生産見通しを下方修正した。

ただ、衣料品小売りなど一部のセクターでは明るい部分もある。衣料品小売り大手のギャップは利益が予想を上回り、通年の見通しを引き上げた。またティーン向けアパレル大手の米アバクロンビー・アンド・フィッチは売り上げの落ち込みが鈍ったと発表した。

中央銀行による追加景気刺激策への期待から、市場は売上高の不振を一蹴した形だ。決算シーズンの先陣を切ってアルミ大手アルコアが第2四半期決算を発表した7月9日以降、S&P総合500種指数は4.7%上昇している。