ジリ貧の電機と復活の自動車の違い(前編)

もしオリンピックのハードル競技で企業がメダルを争えたならば、トラックで試練を積み、すねがあざだらけの日本の製造業は、最近の試合に強豪を何社も出場させていただろう。

 

5年前に世界経済が崩壊して以来、トヨタ自動車やソニーなどの日本企業は果てしなく続くかに見える障害にぶつかってきた。需要の落ち込みや輸出を台無しにする円高に加え、国内では震災とエネルギー危機に見舞われ、タイでは主要供給拠点が洪水に襲われた。その間もずっと、韓国のサムスン電子や現代自動車、復活した米国自動車業界などとの競争は激化してきた。

ところが最近、日本代表チームは成績の差で2つに割れている。電機メーカーと並び日本の製造業の2本柱を成す自動車メーカーは前進している。今年度の第1四半期(4-6月期)に日本のすべての自動車メーカーは利益を上げ、日産自動車を除く全社が1年前と比べて純利益を伸ばした。

対照的に、家電業界の大半はトラックに倒れている。ソニー、パナソニック、シャープの3社は12年3月期に合計1兆6000億円の赤字を計上。今年4-6月期には大手8社中5社が赤字となった。

 

シャープは今月、前期の3760億円の赤字に続き今期の最終損失が2500億円になるとの予想を発表。人員削減やテレビの販売目標の下方修正で他社に追随した。

「ハイテク株の良いポートフォリオは今、基本的に日本企業すべてを売り持ちにしているだろう」。CLSAのアナリスト、アトゥル・ゴヤル氏はこう言い、シャープなどのリストラは一時しのぎの策だと一蹴する。「これらの企業は、現実的な経営ビジョンや事態を好転させる能力を全く示していない」

自動車業界とのコントラストは株価に表れている。自動車株と電機株はともに、今春に上昇相場を演じた後、再度の円高進行と足並みをそろえて下落してきた。だが、東証株価指数TOPIXの輸送用機器指数が年初より約11%高い水準にあるのに対し、電気機器指数は約10%下落した。

ソニーやパナソニックなど、消費者向け製品の比重が最も高い電機大手は、世界金融危機が始まって以来、時価総額を最大で85%も失い、現在は数十年ぶりの安値で取引されている。

 

電機メーカーにとって、自動車メーカーとの相違がもたらす厄介な影響は赤字を円高のせいにしにくいことだ。金融危機が始まって以来、円は主要通貨に対して50%上昇し、輸出の採算は合わなくなり、海外収入は目減りした。

ソニーは昨年、円高のせいで、同社の試算では320億円の潜在的な営業利益を失った。だがトヨタでは、円高はその8倍近い2500億円の減益要因となった。ソニーのほぼ3倍に上る売上高を考慮しても、やはりトヨタの方が負担は大きい。

明暗を分けた理由はタイミングとする説もある。世界の自動車販売台数は世界金融危機が始まった時に特に急激に落ち込み、米国市場は07年の1600万台から09年の1000万台に激減した。自動車メーカーは早急なコスト削減と事業再編を余儀なくされた。

今やサイクルは上昇に転じ、米国や日本などの大市場では繰り延べされた需要の波に乗って販売が回復している。6月に米国の自動車販売台数は前年同月比で2割強増加した。

 
(後編へ続く)