FX再編の嵐再び(前編)

外国為替証拠金取引(FX)業界で、M&A(企業の合併・買収)による本格的な再編に火が付いた。約1年前、監督官庁の金融庁個人投資家向けにレバレッジの上限を25倍以下とする規制を打ち出し、投資熱が冷めた上、業者間の手数料の引き下げ競争が過熱し、収益を圧迫させていることが背景にある。さらに、SBIホールディングス楽天証券など体力に勝るネット証券大手が、FXに本腰を入れる構えを見せており、生き残り競争は“戦国時代"を迎えた。

 

風雲急を告げる、FX業界の再編。これまでは体力差の離れた大手が、競争激化で経営が苦しくなった中小業者を買収するケースが多かったが、今月に入って立て続けに起こった再編劇は、取引高上位10位内に入る大手同士が、価格競争力を高めるため、さらなる規模の巨大化を目指す狙いが透けてみえる。

それが顕著に表れたのが、GMOクリックホールディングス(HD)が仕掛けた再編だ。取引高首位のGMOクリック証券を傘下に持つ同社は13日、伊藤忠商事系で8位のFXプライムをTOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。

GMOクリックHDの高島秀行社長は「FXだけをしたい顧客に対しては、社名にFXと冠した専業の会社の方がアピールしやすい」と述べ、あえて傘下2社を合併せず、2ブランドを駆使し顧客拡大を狙う方針だ。

その上で、FXプライムについては「潜在的な力はあり、当社の買収により価格競争力を発揮できるようにすれば、取引高は3-4倍になる」と強気の見方を示した。

一方、2位のDMM.com証券は1日、6位の外為ジャパンのFX事業を買収。取引高を単純合算すると20兆円を超える強力な2位連合を形成した。

 

さらなる手数料の引き下げなどの価格競争激化と再編加速の兆候を、業界関係者に感じさせるのが、今年5月末に参入したSBIHD傘下の「SBIFXトレード」の動きだ。

北尾吉孝社長が率いるSBIHDは、オンライン証券や住宅ローンなど業容を拡大しており、その豪腕ぶりや、グループの総合力はFX業界にとって脅威だ。

FX業者がそれぞれの特徴を打ち出す上で重要になる戦略の柱は、売値と買値の差であるスプレッドで、事実上の手数料となる。FXトレードは「後発なので、他社とのサービスの違いを出す必要がある」(藤田行生取締役)として、ドル・円取引で他の大手が0.4銭のところを0.19銭でスタートした。

同社が、取引量が一定以上になればスプレッドも段階的に高くなる独自の手数料体系を打ち出しつつ、低スプレッドを提示し続けたことで、大手間の引き下げ競争が再加速した経緯もある。

 
(後編へ続く)