回復する航空機産業

世界の民間航空機の受注が急回復している。00年代の前半には新興国の経済成長に伴う世界的な輸送需要の拡大を見越して航空機の需要が拡大していたのだが、08年のリーマン・ショックによる世界的な景気後退を受けて航空機の受注は大きく落ち込んでいた。
その後、09年を底に回復に転じ、10年の回復は緩やかだったものの、昨年は格安航空会社(LCC)の旺盛な需要などに支えられて受注が急速な回復を示した。

世界の民間航空機の生産は欧州エアバスと米ボーイングの2社がほぼ独占状態にあるわけだが、エアバスの昨年の民間機の総受注機数は1,608機(純受注1,419機)で07年に記録したこれまでの過去最高を更新した。一方のボーイングは、期待の新型機B787の商用化が予定より3年以上ずれ込んだことも影響して、年間の受注機数は過去最高だった07年の6割弱の水準にとどまった。

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ただ、昨年後半からは大型商談が相次いでおり、受注残高は08年末の水準まで回復している。両社の好調な受注を牽引しているのは、ここ数年、世界各地で旅客数を急速に増やしているLCC各社による旺盛な小型機の需要である。
エアバスがマレーシアのエアアジアから200機、インドのインディゴから180機をそれぞれ受注したほか、ボーイングは米サウスウエスト航空から小型機B737を次世代モデルも含めて208機受注、インドネシアのライオン航空からも230機を受注、いずれも受注金額は200億ドル前後で同社の1件の受注としては過去最大規模だという。
エアバスの昨年末時点の受注残は4437機に達し、金額ベースでは約5880億ドルに上る。この積み上がった受注残を消化するのには、現在の生産能力でフル生産しても7年から8年はかかるという。


ボーイングも受注残が過去最高レベルに達していることを受けて、今後2年間で主力機の増産に乗り出す考えだ。現在、月間2.5機を生産するB787は同10機に引き上げ、B737は同35機から38機に引き上げる。最も受注台数の多かったB777についても2割の増産で対応する。航空機本体の生産においては、完全に出遅れている日本の産業界だが、主要部材に関してはエアバス、ボーイング両社にも多くの日本企業が製品を納入しており、航空機需要の回復は日本の関連企業の業績に与えるインパクトが決して小さくはないだろう。
日本国内の航空機関連部材の生産額も、回復に転じつつあるが、今後は世界的な航空機需要の回復を受けて関連部材の生産拡大が本格化してくるのではないだろうか。
また、ボーイングの予測によれば、長期的もアジア太平洋地域などを中心に航空機の需要拡大が予想され、関連部材で高シェアを有する日本企業にとっては、中長期的な収益成長を支えるものとして期待できそうである。

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